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誘導加熱の原理と応用

01 原理

導線に交流電気を流すと、その周囲に磁力線が発生します。
導線をコイル状に巻き、その中心部に金属のような電気的導体を置いてコイルに通電すると、磁力線の影響を受けて、電磁誘導作用により電気的導体(金属)の中に誘導電流(うず電流)が生じます。

この誘導電流は、電気的導体(金属)のもつ抵抗によりエネルギーを損失し、ジュール熱を発生させます。この発熱現象を熱源として利用したのが誘導加熱です。金属を融点以上に加熱・溶解することができます。

  • 原理
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02 条件

a)被加熱材料の材質

誘導加熱では、金属材料と黒鉛が直接加熱の対象となります。
しかし、最近では一部のセラミックスなどでも直接発熱する材料も見受けられるようになりました。

一方、電気的導体でない材料を加熱する場合には、金属や黒鉛を発熱体として利用し、間接的に試料を加熱する方法がとられています。

b)周波数と発熱深さの関係

<表皮効果>
被加熱材料に生じる誘導電流の密度は一様ではありません。
表面に近いほど密度が高くなり内部に向かって急激に低下する性質があります。これを表皮効果と呼びます。

この現象は、被加熱材料の比電気抵抗、比透磁率及び加熱電源の周波数に関わり、とりわけ周波数は加熱装置の選定に際して重要な要素です。表面の電流密度を1として、これが36.7%まで減衰する距離を電流の浸透深さδと定義されており、式1で表されます。
電流の浸透深さδは、周波数が高いほど小さくなります。
即ち、周波数が高いと発熱する部位が表面に集まり、周波数が低いと内部も均一に発熱することになります。

  • 条件
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03 応用例

最近ではIH炊飯器や電磁調理器として、家庭でも使われている誘導加熱機器ですが、ものづくりの現場では、長年の歴史があり様々なプロセスで応用されています。金属自体が発熱すること、急速加熱が可能であることといった特長を生かしています。そして、その適用範囲は、今なお広がり続けています。

誘導加熱を利用した廃タイヤのスチール線除去

弊社は、産業技術総合研究所や複数の企業とのコンソーシアムに参加し、誘導加熱によって、増え続ける廃タイヤのリサイクルの障害となっているスチール線を容易に除去する技術を共同開発しました。